倉庫業法とITベンチャー

1,はじめに

TBS社が放送している「がっちりマンデー」の2018年4月1日放送において、空きスペースを借りたい人と、スペースを貸したい人とをマッチングさせるサービスが取り上げられた。

そのサービスは「モノオク」と呼ばれるものである。

このサービスは、自宅の一室等の空きスペースがある人がホストとして登録し、その空き部屋等を利用したい人がユーザーとして、それを対価を払い使用するためのマッチングを行うものである。

このサービスが個人的に面白いと思ったので気になったことと、それに対する私見を今回書く事にした。

あくまでも、これは、私個人の私見であり、内容の正確性を担保できない事を念頭にお読みください。 

2,利用規約を読んでみる

(1)契約の当事者

モノオク利用規約第1章第2条9号では、このサービスについて、「ユーザー・ホスト間におけるスペース利用のプラットフォームサービス」と定義している。そして、そのサービスについて、「本サービスは、ユーザーの所有物その他の物(以下「荷物」といいます。)を置くためのスペースの空き情報を掲載するためのサービスです。登録利用者は、ユーザーが自らの責任においてスペースを利用して荷物を保管するものであり、スペース利用契約においてホストがユーザーの荷物の寄託を受けるものではないことを認識し、了承するものとします。」と同規約第1章第4条1項において宣言している。

従って、モノオク株式会社が寄託契約等の主体となるのではなく、あくまでも、利用者間で契約関係が発生するとしている。

(2)契約類型について

現行民法は第657条において「寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」として、物を保管する契約について定めを置いている。

例えば、その寄託された物により損害が受託者に発生した場合にどうするのか(民法661条等)、であったり、寄託物の返還時期を定めなかった場合はいつ変換するべきか等が定められている(本稿では、改正前民法の条文を挙げてるが、改正後の条文も同旨である)。

通常物の保管を目的として、空き場所の提供者とその利用者の間に発生する契約は寄託契約として取り扱うことになるであろうが、モノオクは、その利用規約第1章第4条1項において、本サービスが誘引している契約は寄託契約ではない旨を定めている。

では、どういう契約関係を誘引しているのだろうか。

利用規約を詳しく見ていくと、利用規約第2章第2条1項の「ホストが空き情報を掲載したスペースについて、ユーザーから当社の定める方法により利用の申し込みがありこれをホストが承諾した場合には、ホストとユーザーとの間において、ホストがユーザーに対して当該スペースを貸し、ユーザーが荷物を置くために当該スペースを借りる契約(以下「スペース利用契約」といいます。)が成立します。」という規定や同規約第2章第2条3項の「ホストは、スペース利用契約に基づきユーザーに貸したスペースに置かれた荷物については、ユーザーの事前の同意を得ることなく、接触してはならないものとします。」等の規定を置いている。

こうした規定と寄託契約ではないということを素直に読むならば、当事者間の特約がたくさんついてる賃貸借契約あたりが妥当であろうと思われる(ぶっちゃけ寄託契約でいいと思うが、下記で述べる通り、倉庫業法との抵触を避けるための工夫のように思われる)。

3,倉庫業法とITベンチャー

人の物を預かるということには、責任が伴う。

例えば、倉庫が火災等の災害に被災する場合や、盗難窃盗の危険性等を予防し対処する責任である。

こうした物を保管することを生業として営む者が守るべき業界法として倉庫業法がある。

(1)倉庫業

倉庫業とは、倉庫業法第2条2項において「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」と定義されている。

先のモノオクの利用規約で寄託契約ではないと宣言していた理由は、この「寄託を受けた物品」という文言と抵触する可能性を減らすための工夫であると思われる。

なぜならば、「倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない」からである(倉庫業法第3条)。この登録を経ずに、無登録で倉庫業を営むと倉庫業法第28条により1年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金を受ける可能性がある。

実際上、スペースを提供するホストが倉庫業に該当してしまうと、その者は登録が必要となるが、それは利用者にとって不便だといえる。

(2)ホストは倉庫業者か否か

さて、そもそもホストとなる人は倉庫業法が登録を刑罰をもって強制しようとしている倉庫業者だといえるのだろうか。

この点、倉庫業法第2条2項は「保護預りその他の他の営業に付随して行われる保管又は携帯品の一時預りその他の比較的短期間に限り行われる保管であつて、保管する物品の種類、保管の態様、保管期間等からみて第六条第一項第四号の基準に適合する施設又は設備を有する倉庫において行うことが必要でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。」との適用除外も定めている。

従って、①比較的短時間に限り行われる保管であり、かつ保管する物が、倉庫業法6条1項4号の基準に適合するハイレベルな倉庫以外の②普通の一般家庭の一室でも保管可能な程度であれば、倉庫業者としての登録は必要ないといえる。

そして、モノオクでは取り扱う物について、ルールとマナーにおいて、危険物や劇物はもちろん生き物や生鮮食品、美術品や壊れやすい物等の特殊な注意が必要な物の保管をしてはならないと宣言する等、ありふれた普通の物についてのみ保管契約を結べるようにしている。

こうした点や配慮を踏まえると、ホスト側が倉庫業者に該当することは基本的にはないと思われる。

しいて言えば、比較的短時間という適用除外の要件をどうクリアするのかな、というくらいかと思われる。

4,まとめ

このサービスを考えた人めっちゃ頭いいと思った。すごい。

以上

参考文献

モノオク|荷物の困ったを解決する、あたらしい物置きのかたち ( 2018年4月1日 閲覧 )

物流:倉庫業法 – 国土交通省 ( 2018年4月1日 閲覧 )

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