副業(労働)は残業扱いになる事がある
1,はじめに
会社の同期との飲み会の場で、労基法と副業の関係について話したかったが、社会性フィルターにより、表現の自由を自主規制した。
(さすがの私も法律ペラペラしゃべると周りから引かれることは知っている。)
しかし、面白い話であるので、本稿を記する(そういうわけで、語らさせて頂きます)。
2,本論
(1)法定時間外労働時の割り増し賃金支払い義務
我が国の労働基準法は、法定労働時間を超えて労働者に労働をさせた場合、超えた部分については時間外労働として、使用者は最低でも1.25倍の賃金を支払う義務がある。
第三十二条 2項 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
第三十六条 使用者は、・・・協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。・・・
第三十七条 使用者が、・・・前条第一項(36条)の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。・・・
労働基準法
(ア)法構造
- 32条で8時間を超えた労働を原則禁止する。
- 例外として、36条の協定があれば、労働者を8時間を超えて労働させてもよい。
- ただし、37条で8時間を超えた分の労働については、25%~50%増しの賃金を払う義務を使用者に課す。
(2)労働時間の通算
時間外労働か否かの判断で重要となる、労働時間のカウントは、使用者が代わっても通算される(労基法38条)。
そのため、働く会社が1日に複数あった場合、そのすべての労働時間を合算した値が、割増賃金の支払い有無の判断の基礎になる。
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
労働基準法
【Point】どうして通算(合算)するのか
普通の人は1つの会社で一日中働いているんだし、労働時間の計算は会社ごとでもいいのでは、という考えもありますよね。
でも仮に、労働時間を会社毎に計算した場合、君が使用者ならこんな事を考えませんか?
<悪だくみ>
法定労働時間を超えたら最低でも25%の割り増し賃金を労働者に払わないといけないのか、ッチ。。。
まてよ?俺が経営するA社とB社を使えば割り増し賃金を払わないでも済むんじゃないか!?
労働者をA社で5時間働かせ、同日にB社でも5時間働かせる。すると、同じ労働者を10時間働かせたことになるが、割り増し賃金を払わないですむ(少なくとも、1つ1つの会社では8時間超えない)。
ぐへへ、安い賃金で長時間働かせてやる。
こういう悪だくみをする人が出てこないように、我が国の法制度は、会社ごとではなく、労働を提供していた時間のみに着目するんだ。
君、わかったかい?
(3)労働時間
労働者が同じ日に他の企業でも労働した場合、法定労働時間を超える労働時間に突入した時に、労働者を使用していた使用者が、時間外労働賃金を支払う必要が生じる(通常は、副業先がそれを負担せざるを得なくなる)。
例として、本業で8時間働いた労働者が、更に別な会社の労働契約に基づき2時間労働した場合、法定労働時間の8時間を超えた2時間分について、25%増しの賃金を請求する権利が労働者に生じることになる。
とはいえ、厚生労働省の検討会の資料を見ると、グレーな記述がある。
第八十五問 二以上の使用者に使用されるものの労働時間が、通算して八時間を超ゆるときは、どちらの使用者について違反が成立するか。
厚生労働省 | 第2回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料3 https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000361725.pdf
答 八時間を経過することを知つて使用した使用者について違反が成立する。両方共八時間以内で、他の使用者があることを知らなかつた場合には違反は成立しない。
知らなかったなら違反は成立しないwww
つまり、労働者にB社で働くときに、A社で働いている事を言わせなければ、割増部分の賃金を支払わずに、B社で労働させられる(B社は、労働者がA社で働いている事の自己申告がない場合、通算による労働時間超過についての予見可能性がない)。
それに加えて、A社もB社も他人名義で登記して、互いに関係のないように見せれば問題ないやろwww
世の中ちょろいっすわwww
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