Uber Eatsと労災保険
1,はじめに
Yahoo ニュースを流し見していると面白い記事を見つけた。
それは、Uber Eatsの宅配をしている人が事故などにあった場合に、我が国の労災保険が適応されない、というものである。
あー、なるほど
Uberはそういう法的関係の枠組みを使うのか
Uber Eatsが宅配人との間で使用している法的枠組みが面白かったので、労災保険も踏まえて語らさせて頂きます。
2,労災保険
(1)仕事中にケガをしたらどうなるの?
労働者は資本家たる企業に労働力を売り、日々の生活の糧を得ている。
そして、労働者は働く中で負傷したり精神的な病を抱えることもあるだろう。
例えば、工場でプレス機を操作している労働者は、不手際で身体を負傷する可能性がある。他にも、飲食業で調理師をしている方はやけどや傷を受けやすい。さらには、フォークリフトで危険物を運搬している方は、運転ミスや物自体から害を受け得るといえる。そして、ひと昔前だとアスベストもあったよね。
このように、労働者は資本家から人生を台無しにされる可能性のある危険を背負わされている。
危険なことは労働者にやらせて利潤を搾取する生活たーのしー!!!
とはいえ、資本家も資金を事業に投下しているので、ノーリスクではないのですが。。。
まぁ負っているリスクの種類が違うのですな(建前)
(2)労災保険
(あ)概要
我が国は労働により労働者に生じたリスクをケアする制度を構築している。
■労災保険とは
労災保険・雇用保険の特徴|厚生労働省
労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にも死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
また、労働者の社会復帰等を図るための事業も行っています。
この制度により、業務上の負傷の場合や通勤中に負傷した場合、国から保険給付がもらえます。
(い)労災補償給付
労災保険制度とは
労災補償 |厚生労働省
・労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。
・労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。
・労災年金給付等の算定の基礎となる給付基礎日額については、労災保険法第8条の3等の規定に基づき、毎月勤労統計の平均給与額の変動等に応じて、毎年自動的に変更されております。
すなわち、アルバイトだろうが何だろうが、労働契約を締結している労働者が、業務中か通勤中に負傷すると、国が保険給付を行います。
健康保険でよくね?
健康保険法は第1条で「この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」とあるので、労災には適用されません。
なんでだ!?
労災については労災保険制度があるので、健康保険と労災保険で二重の保険給付が発生することを予防するため、と言われています。
3,Uber Eatsと労災保険
(あ)独立した第三者
では、本題に戻りまして、なぜUber Eatsで宅配している人が宅配中にケガをした場合に労災とならないのでしょうか。
結論から言うと、労働契約をUberとの間で締結していないからです。
労働基準法
第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法
労災保険制度はあくまでも、労働者を保護する制度です。
ここで、Uber Eatsの利用規約を見てみましょう。
2.本サービス
… 貴殿は、Uberが物流サービスを提供するものではなく、全ての当該物流サービスはUber又はその関連会社により雇用されていない独立した第三者の契約者により提供されることを了承することとします。
法的情報 | Uber
すなわち、Uber Eatsは独立した第三者と宅配してほしい人をマッチングしているだけであり、宅配している人を雇用しているわけではないと、言いたいわけです。
図式化すると下記の通りです。
(い)Uberの主張する法的構造
- 労災保険制度は労働契約のある労働者を保護する制度である。
- 宅配人はUber Eatsが労働契約を締結し雇用している労働者ではない。
- その為、労働保険制度が適用されない。
おいおい、利用規約に書いたから宅配人とUberに雇用関係はない。
だから労災法は適用されない。そういう法的関係を主張するのか?
我々の法律をなめるなよ?
我々は我々の同胞が不当に搾取されないように労働に関する法制度を構築してきたんだぞ。
そうです。
本当にUber Eatsの配達人とUberの間に労働契約はないと評価できるのでしょうか。
(う)本当に労働者じゃないのか?
労働契約の有無の判断は、契約書とかの形式だけではなく、その人物がどのような状況にあるのかという実質も加味して行われます。
その判断の要素にはいくつかあるのですが、その1つの指揮命令関係の有無について考えてみましょう。
Uber Eatsに配達人は、Uberからの指揮命令を受けているのでしょか?
ネット上の体験記を見た限りでは、仕事を選択できるなど、指揮命令関係にあるとは言い難いです(私が体験したわけではないので、参考程度にお願いします)。
そうなると、労働契約があるとは認めづらいです。
4,Uber Eatsの宅配人が宅配中にけがしたらどうなるの?
結論から言うと、Uber社の言う通り労働契約がないのならば、健康保険制度が活用できます。
法制度のロジックとしては、労災は労災法、それ以外は健康保険法なので。
健康保険はどんな時も我々を支えるとても強力な社会保障制度だったのだ。
そんな小難しいこと言ってないで、焼きそばパン買って来いよ
5,参考文献
- Uber Eats 潜む事故のリスク | 2019/2/28(木) 13:07 – Yahoo!ニュース
- 労働基準法
- 労災保険法
- 労働基準に関する法制度 ④労働者災害補償保険法|法令・制度のご紹介|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省
- 法的情報 | Uber
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