Osushiと資金決済法上の資金移動業に関する私見

1,はじめに

昨日(2018/2/1)、OsushiというWebサービスが発想はとても良いのに、その技術的実装がずさんなものであったため、Twitter上にいる技術者のおもちゃにされる事案が発生した。

そして、この、Osushiは、利用者間での少額の金銭取引を仲介する、というサービスを実施するものである。

こうした、決済事務のIT化に関する法規制は、フィンテック等の金融取引の仕組み自体の変革や、従前見られなかったIT関連技術の取り込みを通じて、金融の将来を大きく変えていくという可能性のある技術が既存の社会システムを改善していく上で、障害となり得るものであるため、決済事務にかかる法規制について関心を持ち、本稿を書いた。

あくまでも、これは、私個人の私見であり、内容の正確性を担保できない事を念頭にお読みください。

2,資金決済事務に関する法規制

(1)決済

決済とは、売買契約等により発生した金銭支払い債務を履行することである。簡単に言えば、お金を支払うことである。そして、決済は企業が営業活動を続けていく中で、日々発生し処理されている古典的な事務である。

しかし、遠地者間での商取引の際、巨額の資金を郵便等によりやり取りすることは危険であり、かつ不便である。そこで、各地に支店を開き、資金決済の不便を解消する産業が発生した。これが、銀行業である。

(2)銀行業法

我が国の銀行法は、第4条において「銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。」と定め、免許を持たずに銀行業を営むことを禁止している(なお、無免許で銀行業を営んだ場合、銀行法第61条1項「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」同法同条1号「第四条第一項の規定に違反して、免許を受けないで銀行業を営んだ者」の規定により、刑罰が科される。)。

そして、銀行は、銀行法第2条1号「預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。」と、同法同条2号「為替取引を行うこと。」の2つの業務を、免許を得ることで営むことが出来る。

(ア)為替取引

ここで、為替取引という語が意味する事について見てみたい。法技術に触れた事のない一般人が為替取引という言葉を聞き思い浮かぶのは、FXで大儲けしているギャンブラーであるが、法技術的には為替取引という語はより慎重に解釈される。

為替取引という用語について、最高裁は平成13年3月12日の第3小法廷決定で「銀行法2条2項2号は,それを行う営業が銀行業に当たる行為の一つとして「為替取引を行うこと」を掲げているところ,同号にいう「為替取引を行うこと」とは,顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいうと解するのが相当である」とした(下線筆者)。

すなわち、為替取引とは、顧客の資金を他の企業や個人へ移動することを仲介する事であるといえるだろう。

(イ)社会の発展と法規制

古典的な社会では、口頭や書面での商取引のみであったが、高度情報化社会となった現代社会では、インターネット等の情報技術を活用した商取引が盛んに行われるようになった。

その一例として、インターネットオークションでは、競売関係者の安全を守るため、オークション会社が、落札者からの入金を一時的に預かり、出品物が到着したと報告があった時に、出品者に代金を渡す、というような配慮をすることがある。

確かにこうした配慮は当事者の安全性を高める合理的なものであるが、オークションの事業者が倒産した場合、落札者が入金した資金が返還されない危険性を孕むため、我が国では、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という。)を定め、利用者の保護を図っている。

3,本件事案について

今回問題となった、Osushiのサービス内容は、ある顧客が他の顧客に対して、少額の資金を譲渡することを支援する、というものであった。ここで、いくつかの気になる点を見てみたい。

(1)為替取引該当性

先述の通り、我が国は「顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行すること」を為替取引と定め、こうした営業を為すには、免許を得ることを求めている。

この点、Osushiが実施している業務は、顧客間での資金の移動を内容とする依頼を受けて、これを引き受け遂行していると評価できるものである。

したがって、Osushiのサービス内容は為替取引に該当する。

(2)資金決済法上の資金移動業

先述の通り、為替取引は銀行業の免許を得ていない法人は営むことが出来ないのが原則である。

しかし、フィンテック等の新技術を持つベンチャー企業やIT企業が決済事業を為せないというのは、社会経済の発展に不利益である。

そこで、我が国の指導者たちは資金移動業という枠組みを作り、少額決済について別枠の制度を作成した。これは、一定の供託金等の要件を満たした事業者に対して、100万円以下の為替取引業務を営むことを認めるものである。

Osushiがこの資金移動業の登録を受けているならば、合法的なサービスであるといえるのだが、金融庁の資金移動業者登録一覧を確認する限り、運営会社は見当たらなかった。

(3)まとめ

Osushiが実施しているサービス内容は、為替取引であるため、何らかの免許を得ていないと、原則として、銀行業法等の金融法制の規制及び処罰の対象となり得ると考える。

以上

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