朝スピーチの法的評価

1,概要

契約上の付随的義務と職場文化の関係について、実例を挙げ考察した。

2,朝スピーチの法的評価

(1)事実の概要

私が締結している労働契約の相手方の法人は、朝1~3分程度のスピーチをするという職場文化が存在する部署がある。

そこで、このスピーチに対して法的目線で分析を行いたい。

(2)職務執行と直接関係のない行為をする義務が労働者にあるか?

まず、かかる行為が法的義務がある場合、どういう事を意味するのかを述べる。

そして、事実の評価を行う。

(a)法的義務があるとはどういうことか

では、契約上の法的義務がある、とはどういうことを意味するのか。

それはすなわち、裁判所の力を借りて、その義務の履行が強制される、ことを意味する。

具体的には、労働の給付は強制執行に適さない性質であるため、民法414条2項及び民事執行法172条により、労働債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨が裁判所により命じられる。

従って、法的義務が及ぶ範囲の無根拠に拡大することは、当事者の予測可能性や自己決定権を害するため、認めるべきではない。

(b)付随的義務

先に、法的義務について述べたが、当事者が合意した事柄についてのみしか、当事者が拘束されないとなると、社会通念上の不利益が生じる恐れがある。

例えば、物の貸し借り行う際に当事者が、ある物を借り、その物を返すという2点のみで合意していた場合、返す際にその物が棄損していたとしても、正当な物の返却債務履行となってしまう。

当事者としては、貸した状態のままで返却される事を望むのが通常であり、社会通念上相当と評価し得る状態で物の返却を行うべきだといえる(なお、この点につき法は、賃借人に対して善管注意義務を明文で課している(民法400条))。

こうした不都合を避けるために、裁判所は当事者の契約の内容を、社会通念に反しない限りで、修正ないし追加することがある(信義則等、民法1条2項)。

(c)本件スピーチについて

本件スピーチ行為は、労働契約上の職務執行の本質を形成するものではないため、職務行為それ自体とは言えない。

しかし、契約上の付随的義務として、職場環境を意図的に害さない、ことが信義則上労働者側に認められるといえる。

この点を踏まえると、それが社会通念上の合理性を欠く等の特段の事情がない限り、労働契約に付随する事柄として法的評価ができるといえる。

3,まとめ

以上の事柄をまとめると、朝にスピーチをする行為は、それが合理性を有しており、かつ職場文化となり、また社会通念上の妥当性を有する場合に限り、労働契約の本質部分ではないが、それに付随する義務として構成されるものと解する。

しかし、あくまでも労働契約に付随する事柄であり、嫌がる労働者に対してスピーチ行為を強制するなどをした場合、信義則等に反するとして、かかる義務は消滅するものと解する。

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