読書メモ「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」日経コンピュータ
0,目次
- はじめに
- 新システム
- 夜間バッチ処理の解体
- コンポーネント化
- 夜間バッチ処理とオンライン処理を統合
- オンライン処理とは
- ドキュメントの整備
- 当たり前のことを当たり前に行うことの難しさ
- 夜間バッチ処理の解体
1,はじめに
昨年(2019年)、みずほ銀行の基幹システムの更改作業が行われました。
新システムへの移行に関するご案内 | みずほ銀行
ATMなどが連休の間使えなくなるなど、広く社会影響のあった案件です。
みずほ銀行ATM停止について、
Twitterで下記のように動画を作成される方もいらっしゃいました。
このシステム更改作業と過去にみずほグループで発生した大規模システム障害について、一冊にまとめた本が出版されました。
それが下記となります。
みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史|日経BPブックナビ【公式サイト】
本稿では、上記を読んだ感想等を記載します。
2,新システム
本書ではシステム更改と、過去に発生した障害について記載しています。
どちらも経営的側面やプロジェクトマネジメントの観点の記載と技術的側面からの記載がありました。
システム障害部分については現場の人を思うと怖すぎ、経営判断が適切にされないとこうなるのか、というものを感じられます。
本稿では、新システムについて、私の現在の職掌から、技術的観点の記載から気になったことをメモ書きします。
本書は金融業界だけに限らず、企業の基幹システムに関わる人なら一読の価値があると、私は思います。
(1)夜間バッチ処理の解体
夜間バッチ処理とオンライン処理を統合させていったという記述に惹かれました。
(あ)コンポーネント化
具体的には入金等のトランザクションを「取引メイン」へ送ると、取引メインがトランザクションに応じて、各コンポーネントに処理を発行する、という仕組みを構築したそうです。
そして、入金データなどを夜間バッチで一括処理するのではなく、個々の取引を「取引メイン」を経由させる夜間バッチ処理へと作り変えたとのことです。
そうすることで、夜間バッチでの振込入金などが、実質的に日中にオンライン処理したのと変わらない処理となるとのことです。
(い)夜間バッチ処理とオンライン処置を統合
夜間バッチ処理をオンラインのPGMを経由するようにすると、どのようなメリットがあるか。
前提として、夜間バッチが所定時刻までに完了しないと、金融機関の業務が開始できないなどの影響が生じます。
しかし、夜間バッチ処理の中身が、個々のオンライン処理のコンポーネントを逐次執行しているだけならば、あくまでもそれは日中でも処理ができるものであるため、夜間バッチが仮に所定時刻に完了していなくとも、最悪日中の業務中に行うことが可能となるといえるでしょう。
障害耐性の向上につながるためよいことだと思います。
(う)オンライン処理とは
オンライン処理や夜間バッチ処理という用語はなかなか耳慣れない言葉かもしれません。
金融システムなど日中、銀行員さんやオペレータさんなどが、顧客情報登録や、与信更新、融資実行等につき、システムに打鍵等を行います。
こうした人が日中打鍵等を行い、DB登録値を更新するものがオンライン処理のイメージです。
これに対して、夜間バッチ処理は、言葉通り夜間に実行される処理の一群を言います。
高度なタスクスケジューラによって処理順序や起動時刻、ファイル受信待ち起動、ジョブ遅延監視などがされているもの、と認識されて大丈夫なはずです。
(2)ドキュメントの整備
みずほ銀行の新基幹システムの開発では直接コーディングを極力なくす方針が採られました。
具体的には、業務の仕様書などからコードを生成するツールを使用し、プログラマーの実力差によるコード品質の差の発生を抑制したとのことです。
また、ツールが生成したコードを修正することを禁止するなど、徹底した管理が行われたようです。
上述のツールによる補助があったとしてもシステム化している業務について、ドキュメント化されていないと効率的な開発・保守・運用が行えません。
そこで、これらについて徹底したドキュメント整備を行い、各処理がどのようなサブシステムにどのようなデータを受け渡しをしているか、などのデータフローなども作成されたそうです。
(3)当たり前のことを当たり前に行うことの難しさ
本書を読んでいて、また実務の中でも感じるのは、ドキュメント整備や業務引継、システム障害発生時の対応手順の明文化・共有など、講学上は当たり前に用意されているべき事柄を行うことの難しさです。
当たり前の事を当たり前に積み重ねる事ってなんでこんなに難しいんでしょうね。
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