まじめの罠

1,はじめに

11月の3連休を使い、東京グールの漫画を1巻から14巻まで一気読みした。

この漫画の主人公を見ていて、高校生の時に読んだ、勝間和代さんの「まじめの罠」(光文社、2011年)をふと思い出した。

まじめの罠は、真面目な人々が真面目に行動した結果、膨大な損害を生じさせる可能性がある、という事とそれがどうして生じるかについて語った本である。

アレント的に言うならば、凡庸な悪の発想に近いだろうか。

さて、以下でつらつら述べようと思う。

2,「まじめ」とは

(1)「まじめ」とは

では、そもそも「まじめ」とはどのような人間的特性をいうだろうか。

これについて、前述の「まじめの罠」では、「与えられた課題設定に疑いを持たない人」(勝間、15頁)とし、「別な言い方をすれば、「与えられたものに対して逆らわない人」です。」(勝間、15頁)としている。

こうした「まじめ」な性格は社会秩序を維持するという点で、とても良い人間的特性であるといえる。

(2)まじめの罠

しかし、「まじめ」であることの問題点として、間違った方向へ真面目に努力してしまう問題点がある。

極端な例として東日本大震災の石巻市の大川小学校の例を勝間氏は挙げている(勝間15-16頁)。

 大川小学校では児童の約7割が亡くなるか行方不明になるという大変な悲劇に襲われました…震災発生時、先生たちは公邸に児童を並ばせ、点呼を行います。学校のすぐ裏には山がありました。…先生たちは山は避難場所としては適切ではないと判断します。

そして「より安全な」高台を目指して非難することに決めたのですが、それは、津波に向かって逃げることを意味していました。

裏山への避難の可能性について石巻市教育委員会大川小学校事故検証報告書の概要版(iv頁)でも

 一部教職員が考慮していた山への避難については、この相談の中、比較的早い段階から提案として出されてはいたものの、避難先としての安全性が十分に確保できないとの判断が下され、その時点では津波に対する危機感を強く感じていなかったこともあいまって、山への避難は行わないという意思決定がなされたものと考えられる。

としており、事実として結果回避可能性の存在を認めている。

そして、報告書は更にこう続ける(報告書v頁)。

 本事故で多数の児童・教職員が被災したことについては、大川小学校の教職員集団が下した意思決定において、その時期が遅かったこと、及びその時期の避難であるにもかかわらず避難先として河川堤防に近い三角地帯を選択したことが、最大の直接的な要因である。
教頭をリーダーとした組織的かつ積極的な情報収集と、活発な議論に基づく柔軟かつ迅速な意思決定がなされていれば、もっと早い時点で三次避難が開始されていた可能性があることは否定できない。

何が正しかったか、ではなく単純にシンプルに、津波が来るなら一番近くの裏山に登ろうか、という発想を実行すればよかったのに、無難な選択肢をまじめに実行したがゆえにこうなったのだろうと思う。

そして、先生方の方針ついていった保護者や児童は、先生の言うことだからと信じてまじめに従ったのだろう。

(3)「まじめ」とは誰から見てまじめなのか

先の例でも、先生の言うことなんて無視して裏山に子供と一緒に避難した保護者達は生き延びた。

別にこれは極端な例であるが、日常でも同じようなことがいえるだろう。

今までやってきたことだからと真面目に続けたり、誤った方向へ組織全体が突き進んだりする。

そして、私も何かしら間違えているのだろう。

E・フロムは権威者とされる者の発言等を無批判に受け入れる者を権威主義的パーソナリティを持つと述べた。

とはいえ、人間は社会的動物であり、権威に服従するようにプログラムされている面もあるのだろう。

D・リースマンは、何を基準に人が行動するのかを、伝統・内部・他者で分け、現代は他者を基準に行動している人が多くなったと述べている。

他者の指示や期待に答え続けたとして、それは自分の人生なのだろうかと。

3,まとめ

とりとめのない話になったが、まじめに周りの人の期待に従うことは、本当に良いのかなと、東京グールの主人公を見て思った。

また、最近久しぶりに大学時代の人と長電話をした。

建築業系の許認可申請や届出、民事上の書面作成等、彼が行政書士として実力をめきめきと付けている事に驚くと同時に、自分を見直すきっかけになった。

私は高校生までIT技術者として自己アイデンティティを持っていたが、大学で六法片手に楽しい日々を過ごした。

思えば、遠くへ来たものだ

参考文献

東京グール 石田スイ(集英社、2012年)

まじめの罠 勝間和代(光文社、2011年)

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